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2014/02/08 (Sat)
波紋が揺れる。
輝きを増した月の反射する銀色の光が、水面に美しい文様を描いては水の中に消えていく。
そこには昼の喧騒など夢であるかのごとく、静寂だけが佇み、人が立てる音がないために、この場にいるのは自分ひとりであると錯覚しそうになる。
しかし、この場にいるのは自分ひとりではなく、美しくも閉ざされた世界に魅入られてしまった存在がいるのだ。
この目の前に湛えられた、水の中に。

ブクブク

水泡が弾ける音がする。
音がする方に目を向ければ、水中の生物が発する泡のように小さな水泡が、水面に触れては弾けて消えていく。

ブクブク

この水泡を生み出す存在は、水に還ろうとでもいうのだろうか。
そのことを否定しようとも、あれが心のどこかでそう思っていることを知っている。
自分はいつも待つだけで、干渉はしないけれど、いつか本当に消えてしまうのではないかと心配になることがある。
そうして、水の生物ではなく陸の生物である人たるお前を、捕まえたいと願うのだ。

ブクブク

この地球にある水のほとんどは海水で、淡水は3%にも満たないという。
その淡水でさえも多くは氷河や氷山というのだから、人が直接利用できる水は貴重なものであるのだろう。
限られた水の中から、お前はこの世界をどう見ているのか。

(きっと、煩わしく思っているのだろう。それでも・・・)

かつてお前は水の中にいるのが美しいと、好きだと言ったが、外の世界も美しいということを知ってほしいと思う。

ゴポポポ

大量に吐き出された水泡。
それが故意であろうと過失であろうと、命を左右することであることは間違いない。
思わず舌打ちし、服が濡れることも気にせず水に飛び込む。
そうして、触れた熱を逃さないように捕まえて、水の世界から引っ張り上げた。

「・・・げほっ、ごほ」

苦しげな呼吸が、お前が地に生きる生き物だと証明する。
お前が想う世界など理解できないし、したいとも思わない。

(お前を奪うかもしれない世界なんて、いらない)

けれど、優しい世界がなければこの生物は弱って死んでしまうのだろう。
世界に奪われずこの手に留めておくにはどうしたらいいのか。

そんな時、ふと、耳に届いたその言葉。

(・・・ああ、お前がそう言うのなら――)

この愛おしい人魚を逃がさないように、足掻いてみせようか。

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”語り水”の「彼」視点です。

何度データが消えたことか・・・・
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彩月 椿
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女性
誕生日:
1991/03/29
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自己紹介:
自然をこよなく愛し、たまに小説なんかを書くマイペースが自慢な人間です。
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