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2008/06/01 (Sun)
白き六花よ
その腕に光を抱け
月が満ち
輝く蕾が花開くまで

始まりと終わり
幾年と変わることなき理
静かに咲き誇り
一面を白く染め上げる
透き通る風は
眠る大地の子守唄

さあ 舞い上がれ
戸惑うことなどない
ただ思い行くまま風とともに
汝が唄は
大地の白き子守唄
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2008/03/12 (Wed)
風が流れる
どこか優しい気配を纏ったそれに気付いて、彼は顔を上げる
ああ、約束通り来てくれたんだね
目の前に、花を纏った女性が立っていた
彼らの周りには、まだ白い雪が残っている
彼がここにいる間は決してとけないだろう
だが、それは許されない
いずれここを立ち去らなくてはいけない
彼の持つ理は多い
だからこそ、彼女が来るのを待っていた
彼は、そっと彼女に手を差し伸べた
ゆっくりと差し出される手を愛おしそうに眺め、彼女の暖かな手を握る
そのまま彼女を引き寄せる
彼らは一言もしゃべらない
言葉を交わせば、別れなければならないことを知っているから
僅かな時間
互いの存在を感じるだけ
彼は終わりと休息を与える者
彼女は始まりと命を与える者
彼は、何者にも興味を持たなかった
ただ白に埋もれて、時が来るまで見守っていればよかったから
けれどある時、気まぐれに待ってみた
彼の後に訪れる者を
彼を見た彼女は驚いていた
それが、彼らの始まり
それから彼らは、唯一会うことのできる日に約束をした
時が満ちた
二人はそっと立ち上がってお互いを見た
ゆっくりと手を離しながら、たった一言言葉をかける
「春(しゅん)」
「冬(とう)」
それは、彼らの約束
彼らだけの儀式
彼は再び眠りにつく――

2008/03/09 (Sun)

年に一度の、大切な人にチョコレートを送る日がやってきた。

春桜国では女性達は皆、心を込めて作ったチョコレートを手に、想う人の元に向かい、男性はお返しに女性に花を渡す。

花の美しさが、男性がその女性に対してどう思っているかを表すのだ。

 しかし、誰もが浮き立つこのイベントは、時によって過酷な争奪戦へと姿をかえる。

 女性がチョコを送るのは、たった一人。

 それをめぐって、男達の戦いが始まるのだ。

だが、それはごく一部の話であって、彼らには関係の無い話。

 

「・・・・・・これで、よし」

 白い包装紙に赤とピンクのリボンでラッピングした、チョコレートとクッキーを詰めた箱を前に、鈴は満足げな笑みを浮かべていた。

今年は去年よりも、うまくできたと思う。

毎年あげていた兄には、今年はあげられないけれど、町を包み込む雰囲気に流されて、ついつい作ってしまった。

「・・・・・・どうしよう」

作ったはいいが、あげる人がいない。

自分を守ってくれている二人に、あげようかとも思ったが、二人だ。

自分があげられるのは、一人。

どちらか一人だけに、あげるわけにはいかない。

ならば、自分で食べてしまおうか。

しかしそれもそれで、悲しいものがある。

「・・・・・・どうしよう」

 もう一度同じ言葉を繰り返し、人差し指で箱を突く。

 空には青空が広がっていた。

 

「・・・・・・」

紅簾は何を考えるでもなく、ただ空を見ていた。

透き通るような青に、真っ白い雲が所どころに浮かんでいる。

風はまだ冷たく、たまに雪が降るが、日の光は暖かくなってきており、春が近いことを感じさせた。

『・・・・・・聞きまして?・・・・・・ええ。くすくす』

『本当に・・・・・・。くす・・・・・・楽しいこと』

 どうも今日は騒がしい。

 至る所から、精霊や動物達の声が聞こえてくる。彼らは一つの話題について、話し合っているようだ。

「・・・・・・騒がしい。何事だ」

 紅簾は、近くにいた精霊に言葉を投げかけた。

 すると精霊達は、畏まったように膝を折り、軽く頭を下げた状態で話し始めた。

「はい。今日は人間達にとって、特別な日なのでございます」

「特別な日?」

「ええ。今日は、人間達がチョコレートや花を送り、互いの意思を確認しあう日なのです。女はチョコレート。男は花。相手が自分をどう想っているか、ということを知りたいのでしょう」

 くすくす、と鈴のような音を響かせる。

「くだらない」

 眉間にしわを寄せながら、紅簾は呟いた。彼の視線はずっと空に向いている。

「紅簾様、紅玉の姫も何かを作っていらしゃいましたが・・・・・どこか、悩んでいたようです」

「きっと、どなたに差し上げようか、悩んでおられたのね」

「そうね。紅簾様か琉砂、どちらにしようか迷っておいでなのだわ」

 彼女達は再び、くすくす、と笑い始めた。

 いつもなら、紅簾がいれば許しを得るまで自ら話をしないのだが、人間達の気に呑まれたのか、彼女達も浮かれているようだった。

 次第に騒がしくなってきた精霊達を視界に入れながら、紅簾は眉間のしわを深くした。

「お前達」

 紅簾の感情の伴わない声に、一瞬であたりは静まり返った。

「私は、騒々しいのが嫌いだ。消えろ」

「・・・・・・御意」

 風と共に姿を消し、完全な静寂が訪れると、紅簾は小さくため息をついた。

「・・・・・・くだらない」

 その呟きを聞いていたのは、空だけだった。

 

 どうしようかと悩んでいた鈴は、庭で紅簾が空を見上げていることに気付き、箱を手に取って、庭に続くドアを開けた。

 春の気配を感じる風に髪を預けながら、紅簾は不機嫌そうに空を睨んでいた。

「どうしたの、紅簾」

 そっと鈴が問いかけると、視線を鈴に向けて、少し和らいだ表情を浮かべた。

「いや、たいしたことではないのだが・・・・・・」

「?」

 首を傾げたまま、紅簾の顔を見ていた鈴は、彼の眉間にしわが寄ってきていることに気付いた。

「・・・・・・」

「・・・・・・。・・・・・・」

「・・・・・・騒がしいんだ」

「え、騒がしい・・・・・・?」

 紅簾は再び空を見上げて、太陽の光を遮るかのように手をかざす。

「今日は、いつにも増して、精霊や動物達が騒がしいんだ。先ほど追い出しはしたが、風に乗って気配が伝わってくる。よほど浮かれているらしいな。彼らの話によれば、今日は特別な日なのだろう?」

 紅簾は皇獣だ。だからこそ、人では認識できない者達の、姿や声を見たり聞いたりできるのだろう。

「ええ、そうね。確かに特別な日だわ」

 そう言いながら、鈴は手に持っている箱を眺めた。

 どうするとでもなく、時間は流れていく。

「そういえば、琉砂は?」

 ふと、鈴は口を開いた。

 琉砂の姿を、朝から見ていない。ちょっと出かけてくるよ、と手を振って出て行ったきりだ。そろそろ帰ってきてもいいころなのだが。

 不安そうな鈴に、問題ないと紅簾は言う。

「情報集めだ。二日は帰ってこれないだろう」

 なるほど、帰ってこないわけか・・・・・・帰ってこない?

 つまり、今日はここに紅簾しかいないということ。

すると、これを渡すのは紅簾しかいなくなる。いなくなるのだが・・・・・・。

――いいのかな・・・・・・

 なんとなく、申し訳ないような気がしてくる。だからといって、他に渡す相手もいない。

「・・・・・・うーん」

「?」

 先ほどから、なにやら考え事をしている鈴に、紅簾は首を傾げる。

「・・・・・・きゃ!」

「!」

 そんな彼らの間を、突如、突風が駆け抜けた。

 風は鈴の持っていた箱を奪い、空高く舞い上げる。箱はそのまま、風の力を失い紅簾の上へと落ちてくる。

 あまりにもちょうどよく、紅簾の手の上へと落ちてきた箱を見て、鈴は紅簾を見つめた。

「・・・・・・ねえ。これって・・・・・・」

鈴の視線から逃れるように、紅簾は目を逸らし、忌々しげに呟いた。

「余計なことを・・・・・・」

 紅簾の反応からするに、どうやら風の精霊達が鈴と紅簾に気を利かせたらしい。

「すまない。後で奴らには、よく言っておく」

 そう言って、紅簾は箱を返そうとする。

 だが、鈴は首を振って、そっと紅簾の手ごと箱を包み込んだ。

「いいの。貰ってくれる?紅簾」

「・・・・・・いいのか?」

視線をやや逸らした状態で、紅簾が呟く。

そんな彼が面白くて、鈴は、くすくす、と笑う。

――悩んでいたのが、馬鹿みたいだなあ。

紅簾の少し照れた様子を見ながら、鈴は思った。

紅簾は、辺りを見回し、庭の一角に目を留めると、そこに向かって歩き出した。

 どうしたのかと、その様子を見つめていると、紅簾はしゃがみこみ、振り返ったとき一輪の花を持っていた。

 桃色の花弁が、中心から円を描くように広がっている。まるで、何かを包み込むような、優しい印象を持つこの花に付けられた名は――

「・・・・・・夢想花」

 花言葉は・・・・・・

優しく微笑む紅簾が、手にした花を鈴の髪にそっとつけながら、耳元で囁く。

「貴女に、絶対の信頼と優しさを」

 鈴の手を包み込むように握りながら、紅簾は嬉しそうに微笑む。

「ありがとう」

どこからともなく流れる風は、彼らの周りに白い花を降らせた。


2008/02/03 (Sun)

「では・・・六花、紅簾。現状を報告する」

 琉砂の言葉に、二人は無言で頷く。

 それを見た琉砂が、少し前かがみになって話し始めた。

「今のところ大きな動きは無い。が、それは表面上だけだ。実際は色々とやっているようだな。そのうち仕掛けてくるだろう。それと、王子が操られていることに誰も気付いていない。皇帝でさえもな」

「お父様も?」

――お父様が気付いていない?

 清漣は歴代の皇帝の中で一番力が弱かったが、この国が開かれてから今までにない最高の時代を築き上げるほどの才を持つ人物だ。

 先を見通し、それに必要なことを自らが積極的に先頭に立ち、確実に成し遂げる。誰もが彼を信頼し、尊敬し己から頭を下げるのだ。

 そんな父が、自分の後を継ぐ兄の変化に気付かないはずがない。

「いえ、違う・・・・。きっとお父様は気付いていらっしゃる。気付いていても何もしていないだけよ」

 まっすぐに。自信を持って言い切れる。

 鈴の言葉に、納得のいかないという風に琉砂が顔をしかめた。

「何故だ?このままだと国が乱れる可能性があるんだぞ。民想いの皇帝で有名なお前の父親が、この事態を放っておくわけがない」

「私も鈴の考えと同じだ。彼は知っている。それも、私達が知らないこともすべてを」

「何故分かる」

 鈴はともかく、紅簾にまで反論された琉砂は、不機嫌さを隠さずに言った。

紅簾と出会ってからは一度も父と会っていない。ただでさえも、忙しくてめったに会うことができなかったのに、何故面識のない紅簾が知っているのだろうか。

鈴も不思議に思う。

「一度、彼に会ったが、すべてを見通す目をしていた。力そのものは弱いが、それを補うものがある。おそらく、彼には隠し事などは通用しないだろう」

 敵には回したくない人物だと呟いて、紅簾は黙った。

「紅簾、いつの間にお父様に会ってたの?」

 それならそうと言ってくれればよかったのに。

 そういえば、もうしばらく会っていない。

 最後に姿を見たのはいつだったか・・・・・・

「こちらに来て最初に。扉を開けてくれたのが彼だったから」

 唐突な言葉に驚いて、一瞬紅簾が何を言っているのか分からなかった。

「・・・・・扉?」

「そう。扉」

 扉とはなんなのだろうか。

「話がずれているぞ・・・・・・・」

 話の軌道を修正してくれたのは、琉砂だった。

「え?なんだっけ」

「あのな・・・・」

 琉砂は呆れたような、諦めたような顔をした。はーというため息までついている。

「どうして鈴・・・・じゃなかった、六花の父親、皇帝がこのことを知っていて、手を出さないかということを聴いていたんだが」

「ああ、そうだったわね」

 何故。

 はっきりと言い切れる自信がある。

お父様が、この件に気付いていると言い切れる自信が。

 それは――

「お父様がタヌキだから」

「・・・・・・・は?」

「適切な答えだな」

 頭の上に疑問符を浮かべている琉砂と打って変わって、紅簾は妙に納得している。

「タヌキだからよ、お父様が」

「た・・・タヌキって・・・・」

鈴はもう一度言ったが、琉砂はまだ困惑しているようだ。

 当然といえば当然の反応だろう。

 一国の皇帝が、それも娘にタヌキなどと言われれば、誰だってこのような反応を返すはずだ。

――あまり、お父様のタヌキ話を話したくはないけど、琉砂に理解してもらうには話さないといけないわね・・・・・

 ふうっと短く息を吐いて、鈴は口を開いた。

2008/01/27 (Sun)

一通り食べ終わり、食器を片付けてから、鈴は疑問を口にした。

「ねえ、琉砂。私の名前を変えるとかなんとか言っていたわよね。どうして?」

 そう。名前などいちいち変えなくとも、同じ名前などいくらでもいる。わざわざ変える必要などないはずだ。

 不思議そうに鈴が首をかしげると、琉砂は苦笑した。

「それはな、お前しかいないからだよ。その名前を持っているのが」

「・・・・・え?」

私しかいない・・・・?

「・・・・・どういうこと?私しかいないって、どういう」

「さあな。だが、皇帝が禁止したんだよ。ある日突然な」

「お父様が・・・?」

「そう。だから、お前ぐらいの歳の子供には『鈴』という名前のヤツはいないんだ」

 何故、わざわざそのようなことをさせたのかが分からない。

 考えがぐるぐる回っていた鈴に、話を聞いていた紅簾が口を開いた。

「せめてもの贈り物だからだろう」

「紅簾・・・?」

「いくら混乱を避けるためとはいえ、娘に不自由な思いをさせてしまう。満足に抱きしめてやることもできない。だからせめて名前だけでも、たった一つのものを、と思ったのではないか。子供を愛していない親などいないからな」

 たった一つのものを・・・・・?

「まあ、そうだろうな。すべての親がそうとは限らないが、少なくともお前の親は愛していると思うぞ。というか、むしろ愛しすぎだ。親バカの域に入るぞ」

 父の想い。本当の意味など知らなくとも、私だけのたった一つのものがある。

――こんなに嬉しいと思わなかったなあ・・・・・

「鈴」

「ん?なに、紅簾?」

「顔がにやついているぞ」

えっと鈴が手を頬に当てる。どうやら無意識のうちに笑っていたようだ。

「と、まあそういうわけで、鈴には名を変えてもらわないといけないんだが・・・・・・なにか希望はあるか」

「・・・・・」

「まあ、そんなに急いで決めなくともいいんだが」

名前。

「・・・・・六花」

「雪・・・・か」

雪の異名は六花。穢れ無き六枚の白き花。

忘れてはいけないから。忘れたくないから。あの日のことを。

その真意を読み取った二人は、そっと顔を見合わせた。

「では・・・六花、紅簾。現状を報告する」

 琉砂の言葉に、二人は無言で頷く。

 それを見た琉砂が、少し前かがみになって話し始めた。

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誕生日:
1991/03/29
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学生
趣味:
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自己紹介:
自然をこよなく愛し、たまに小説なんかを書くマイペースが自慢な人間です。
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