2007/02/11
2008/03/12 (Wed)
風が流れる
どこか優しい気配を纏ったそれに気付いて、彼は顔を上げる
ああ、約束通り来てくれたんだね
目の前に、花を纏った女性が立っていた
彼らの周りには、まだ白い雪が残っている
彼がここにいる間は決してとけないだろう
だが、それは許されない
いずれここを立ち去らなくてはいけない
彼の持つ理は多い
だからこそ、彼女が来るのを待っていた
彼は、そっと彼女に手を差し伸べた
ゆっくりと差し出される手を愛おしそうに眺め、彼女の暖かな手を握る
そのまま彼女を引き寄せる
彼らは一言もしゃべらない
言葉を交わせば、別れなければならないことを知っているから
僅かな時間
互いの存在を感じるだけ
彼は終わりと休息を与える者
彼女は始まりと命を与える者
彼は、何者にも興味を持たなかった
ただ白に埋もれて、時が来るまで見守っていればよかったから
けれどある時、気まぐれに待ってみた
彼の後に訪れる者を
彼を見た彼女は驚いていた
それが、彼らの始まり
それから彼らは、唯一会うことのできる日に約束をした
時が満ちた
二人はそっと立ち上がってお互いを見た
ゆっくりと手を離しながら、たった一言言葉をかける
「春(しゅん)」
「冬(とう)」
それは、彼らの約束
彼らだけの儀式
彼は再び眠りにつく――
どこか優しい気配を纏ったそれに気付いて、彼は顔を上げる
ああ、約束通り来てくれたんだね
目の前に、花を纏った女性が立っていた
彼らの周りには、まだ白い雪が残っている
彼がここにいる間は決してとけないだろう
だが、それは許されない
いずれここを立ち去らなくてはいけない
彼の持つ理は多い
だからこそ、彼女が来るのを待っていた
彼は、そっと彼女に手を差し伸べた
ゆっくりと差し出される手を愛おしそうに眺め、彼女の暖かな手を握る
そのまま彼女を引き寄せる
彼らは一言もしゃべらない
言葉を交わせば、別れなければならないことを知っているから
僅かな時間
互いの存在を感じるだけ
彼は終わりと休息を与える者
彼女は始まりと命を与える者
彼は、何者にも興味を持たなかった
ただ白に埋もれて、時が来るまで見守っていればよかったから
けれどある時、気まぐれに待ってみた
彼の後に訪れる者を
彼を見た彼女は驚いていた
それが、彼らの始まり
それから彼らは、唯一会うことのできる日に約束をした
時が満ちた
二人はそっと立ち上がってお互いを見た
ゆっくりと手を離しながら、たった一言言葉をかける
「春(しゅん)」
「冬(とう)」
それは、彼らの約束
彼らだけの儀式
彼は再び眠りにつく――
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